医師の直接採用とは?
紹介会社を使わない採用のやり方とメリット・デメリット

医師の採用と聞いて、真っ先に人材紹介会社を思い浮かべる採用担当者は少なくないはずです。しかし福祉医療機構「2025年度病院の人材確保に関する調査」を見ると、常勤医師の募集で人材紹介会社を使った病院は78.4%にのぼる一方、実際に「採用につながった」と答えた割合は43.9%にとどまります。残りの過半数は、医局人事や院内からの紹介、病院のホームページなど、紹介会社を通さないルートで決まっているということです。この記事では、医師の直接採用とは何か、具体的なやり方とメリット・デメリット、紹介会社との付き合い方の整理の仕方をまとめます。
01医師採用は、実は紹介会社だけに頼っていない
福祉医療機構の調査(2025年7月22日〜8月14日実施、412法人434病院が回答)では、常勤医師の募集時に人材紹介会社を使った病院は78.4%でした。ただし「採用に効果があった媒体・経路」を尋ねた設問でトップに挙げられたのも人材紹介会社で43.9%、次いで医局人事、経営陣の人脈、院内医師からの紹介、病院ホームページなどが続くという結果でした。使用率と効果実感には、そもそも差があります。
常勤医師採用における媒体・経路(福祉医療機構「2025年度病院の人材確保に関する調査」)
- 募集時に使用した割合:人材紹介会社78.4%
- 採用に効果があったと回答された割合:人材紹介会社43.9%(トップ)
- 次いで医局人事、経営陣の人脈、院内医師からの紹介、病院ホームページなどが続く
m3.comが医師会員を対象に行ったアンケートでも、似た傾向が出ています。病院経営層に医師確保の手段を聞いたところ、「直接雇用」が60.6%でもっとも多く、「大学医局からの派遣」「人材紹介会社」がそれぞれ50%で続きました。診療所の開業医に限ると直接雇用が52.8%、人材紹介会社は17.9%にとどまっています。医師採用イコール紹介会社、というイメージほど、現場は紹介会社一辺倒ではないようです。
コストの面でも無視できません。医師紹介料の相場は、東京都病院協会の調査で平均335.9万円という報告があります(詳しくは医療機関の紹介手数料はなぜ高い?)。直接採用で決まれば、その分はまるごと浮く計算になります。
02直接採用の具体的なルート
- 医局人事:出身大学や関連医局とのつながりを通じた紹介・派遣。地方病院では今も太いパイプであることが多いです。
- 院内・関係者からの紹介(リファラル採用):現職の医師や職員が、知人や後輩を紹介する形。
- 経営陣・診療部長の人脈:学会や研究会で顔を合わせてきた関係から声がかかるケース。
- 自院ホームページ・採用ページ:直接応募の窓口として機能させる。
- 研修医・非常勤からの登用:研修医として在籍していた人がそのまま常勤になる、非常勤で数年勤めた医師が常勤化するケース。
- SNS・医師専用コミュニティでの発信:採用担当者や院長自身が情報発信し、そこから問い合わせが来るケースも出てきています。
03直接採用のメリット
手数料がほぼかからないことは、やはり大きな利点です。335.9万円という紹介料の相場と比べれば、1人採用できるだけでその分が浮きます。
もう一つは、情報の質です。紹介者や採用担当者が候補者をある程度知っているケースが多く、勤務ぶりや人柄について、面接だけでは分からない情報が入りやすくなります。病院の理念や現場の実情も、紹介会社を介さずに直接伝えられます。
04直接採用のデメリットと限界
良いことばかりではありません。母集団形成には時間と人手がかかり、専任の採用担当がいない病院では片手間の対応になりがちです。診療科や地域によっては、そもそも直接つながれる候補者自体が少なく、専門性の高い診療科や都市部から離れた地域では、医局や紹介会社に頼らざるを得ない場面が残ります。
人脈頼みの採用には、もう一つ弱点があります。担当者の異動や退職で、ルートごと途切れてしまうリスクです。属人化した採用は、その人がいなくなった瞬間に止まります。
ヒポくんメモ「知り合いだから安心」って、実は一番落とし穴になりやすいんだよね。長い付き合いがあっても、実際に同じ職場で働いた人にしか分からない勤務ぶりって、確かにあるんだ。
05直接採用を増やすための実践ステップ
- 医局とのつながりを担当者個人任せにしない:病院として記録・引き継ぐ。
- 採用ページの情報量を増やす:当直回数、症例数、給与レンジなど、紹介会社の求人票より具体的に書く。
- 研修医・非常勤医師との関係づくりを前倒しする:採用の直前ではなく在籍中から始める。
- 直接採用でも面接と紹介者の話だけに頼らない:第三者からの情報を組み合わせることで、「知り合いだから」の思い込みを補正できます。
06紹介会社をゼロにする必要はない
直接採用の比率を上げる価値は大きいものの、専門性の高い診療科の欠員や、急な退職への対応では、広い母集団を持つ紹介会社のスピードが必要な場面も残ります。ゼロか100かで考えるより、直接採用で届く範囲を広げ、届かない部分だけ紹介会社に頼るという優先順位の転換のほうが現実的です。
なお、日本医師会が運営する無料の紹介事業「ドクターバンク」も選択肢の一つですが、m3.comのアンケートでは49.4%の医師が「知らない」と回答しており、認知度の低さがネックになっているようです。
07よくある質問
Q. 医師の直接採用は、紹介会社を使うより確実に安く済みますか?
手数料はかかりませんが、採用担当者の人件費や採用活動にかかる時間はコストとして発生します。紹介料の相場(平均335.9万円という報告)と、自院がどれだけ採用活動に工数をかけられるかを見比べて判断する必要があります。
Q. 直接採用に向いている病院、向いていない病院はありますか?
医局とのつながりが強い病院や、院内の医師・職員からの紹介が生まれやすい病院は直接採用を伸ばしやすい一方、専門性の高い診療科の欠員や急な退職への対応では、紹介会社の母集団の広さが必要になる場面も残ります。
Q. 直接採用ならミスマッチは起きませんか?
起きます。知り合い経由の採用でも、実際に一緒に働いた人にしか分からない勤務ぶりやチームでの協働姿勢はあります。面接や紹介者の話だけでなく、第三者からの情報を組み合わせて確認することが、直接採用でもミスマッチを減らすポイントです。


